年末調整で一括して定額減税を行うことは可能か?

令和6年の所得税の定額減税についてです。
対象労働者に対して本年6月以後の賃金での定額減税を先送りして年末調整で定額減税を行うことは可能なのか。
この点については、そもそも国税庁がQ&Aなどで周知しています。
まずは、必ず令和6年6月以後の給与・賞与で、定額減税を実施すべきです。

これを労働基準法の賃金支払の原則との関係でみてみるとどうでしょうか?
あまり公にされていませんが、次のような厚生労働省の通達が発出されています。
その中で次のような考え方が示されています。
 

令和6年分所得税の定額減税に係る申告、相談等への対応について

令和6年基監発0530第1号から抜粋です。
 

1労基法第24条第1項との関係

労基法第24条第1項において、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」こととされ、その例外として「法令に別段の定めがある場合」においては、賃金の一部を控除して支払うことができるとされている。
仮に、対象労働者に対して、本年6月以後の賃金での定額減税を先送りして年末調整で定額減税を行った場合には、6月以後の賃金について、本来、源泉徴収すべき税額より過大な税額を控除することになり、こうした過大な税額の控除については、労基法第24条第1項の例外の要件である「法令に別段の定めがある場合」に該当すると評価することはできないことから、同法第24条第1項違反になるものと考えられる。
 

2申告、相談等に係る対応について

(1)労働局及び労働基準監督署の関係職員への周知等
上記1の考え方について、労働局及び労働基準監督署の監督部署職員(非常勤職員を含む。)及び総合労働相談員に対して周知するとともに、定額減税と労基法第24条第1項との関係について相談があった場合には、上記1の考え方に基づき対応すること。
(2)本省への報告
定額減税に関して、労基法第24条第1項違反であるとして申告がなされ、これを受理した場合には、申告処理台帳等の関係書類とともに、直ちに、本省労働基準局監督課監督係まで報告すること。

このような考え方や労働局・労働基準監督署の対応の方針が示されています。
「年末調整で一括して定額減税を実施する」といったことは、考えない方がよいでしょう。